雑感) ダムの是非論はいたしません
元々スナッパー的な撮り方が好きな私は、これといった撮影目的もなく、カメラを持ってぶらついているときに
たまたま目にとまったものを無責任に撮る、ややこしいことは考えずにレリーズする--というのがお好みの撮影スタイルです。

一方、人間ウォッチングが好きで、町に出るとついつい観察を始めて、人間を入れた一コマを撮りたくなるのですが、
最近は非常に厳戒体勢が敷かれていますので、町でのスナップは控えるようにしています。

そんなところへ滝めぐりのお誘いを頂き、その道中で見かけたダムが目にとまり、
滝とダムという、ある意味相反するものの写真を撮って楽しんでおります。

ダム撮影のきっかけは、兵庫県引原ダムのダム湖「音水湖」の風景に出会ったことでした、
それも早朝、あまりにも美しかったです。
このときは滝目的で先を急いでいましたので寄り道はしませんでしたが、
どうしても気になって後日一人でその場所に戻ってきたのが最初です。
ダムめぐりのきっかけはダム湖でして、ダムではなかったのです。

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2007/9 兵庫県 音水湖



きっかけはダム湖でしたが、ダムに出会うときの期待感はなかなか衰えるものではないです。
特に下流側から近づき、堤体がどぉ~~んと現れてくれると、単純に拍手喝采です (^^)
100基で十分と思っていましたが、現在128基、200基くらいは回ってみようと思ってます。
なにか感じるものがあるかもしれません。

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2008/11 兵庫県 多々良木ダム 下流側の公園にて


さてそんな「ダム」ですが、
諸般の事情で「ダムとダムサイト、及びその道中の風景写真を撮って回っています」ということにしています。
しかし実質は「ダムの写真」がほとんどであります。
また、「必ずしもダムそのものが目的ではない」ともしてあり、ダムそのものに対する興味はほとんどありません--、
と言っているようなものですが、あながちそうでもないのです。

ダムといえば、どうしてもその是非論は避けて通れないものだと認識しておりますが、
公開の場でダムの是非については触れたくないので、あえてそのように表現しています。


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実は、私は先祖代々吉井川の下流域で農業主体で暮らしてきておりました。
田植えの時期になると、農家は水路を堰き止めてそれぞれの田んぼに水を引き込みます、これはあたりまえのことです。
幅30cm程度の板で作った仕切りを川に差し込んで堰をつくり、水の流れを堰き止めて水を田んぼに流し、
あまった水は堰を越えて次なる田んぼへ導かれるわけです。この小規模な自由越流はよく眺めていたものです。

稲刈りの時期になると水路の水は減少しますが、これは吉井川から取水する水量をコントロールしているからに他ならず、
自然にそうなっているのではありません。
子供の頃から、川(水路)の水量や水路をコントロールすることは当たり前として育っています。

また、私の生まれる前ですが、大きな台風で吉井川の土手が決壊し、相当数の村が浸水しました。
何人かの友人の家は、跡形もなく完全に流されてしまったと聞きます。
私の家は2階まで水に浸かり、屋根の上に避難し、水が引くまでは船で往来したと聞いています。
浸水というのはかなり悲惨で、家具が使えなくなることはいうに及ばず、特に田舎で困るのが汲み取り便所の氾濫です。
ひとたび氾濫すると、そこここに例のものが浮いて流れてくるのです、衛生的にも最悪な状態です。
寝耳に水ではないのです、寝耳にアレとは、想像するまでもなくかなり悲惨です。

その後、吉井川の土手の改修で堤防の決壊の心配はなくなったものの、
ひとたび大規模な台風がやってくると、木造の橋はそのたびに流されていまして、流れていく橋をこの目で見たこともあります。
こちらも欄干のない木造の橋から、立派なコンクリートの橋に作り変えられ、今ではほぼ心配はなくなりました。

と同時に、上流にダムでも出来て田んぼへ水を送るのと同様に水量のコントロールが出来れば安心だとは聞かされていました。

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岡山県 吉井川下流 西大寺にて 2005/9/6 台風14号襲来


ところが、県内(特に東部)では、選挙のたびに「苫田ダム問題」という言葉が飛び交い、
これの是非は選挙の結果に大きく影響するとされていました。
「苫田ダム問題」、このフレーズは長い間続き、今でも「苫田ダム」という言葉よりも私の中では聞き慣れた響きなのです。
ははぁ~ん、ダムというのはなんだかんだといろいろと問題があるのだなと感じておりました私は、
「とまたダ・・・」ここまで聞くと、そこから先は完全に避けるようにしていました。
活字に「苫田」とあれば、目を伏せて閉じていました。

ですから工事が始まっていたのも完成したのも全く知りませんでした(おかげで世紀のラビリンス放流を見逃しています)。

数年前に実際のダムを目にして、そしてそれが「苫田ダム」であるということを銘板で確認したとき、
タイムスリップしたかのような錯覚と、伝説と現実の狭間にいるような経験のない感覚を味わいました。

苫田ダムのホームページでは、下記のように紹介されています。

「苫田ダムは昭和42年の予備調査から40年、着工から6年の歳月を経て完成しました。
地元の人々をはじめとする多くの人々の協力を経て平成17年4月から運用を開始しています。」
・1953(S28):岡山県が吉井川総合開発事業着手
・1967(S42):苫田ダム、予備調査開始
・1999(H11):着工
・2004(H16):湛水試験開始
・2005(H17):運用開始

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2008/11 岡山県 苫田ダム



長期に及ぶ交渉があったことはなんとなく知っていましたが、
「苫田ダム」という言葉は私の中でタブー化してしまっていまして、その実情・内容は全く知りません。

一般に、ダムというのは自然破壊と非難される場合があるというのは知っています、
先祖代々の土地や村が湖底に沈むのを余儀なくされる人々がいること、
そしてそれがどのくらい重大なことであるかということは、田舎の百姓の長男として教育された私はある程度理解できます。
現在堤体下流側に近づくための道は、ダムが出来る前は、人形峠へ繋がる旧道(たぶんR179)だったと記憶しています。
現在は堤体の前で断ち切れているこの道も、以前は道が続き、そこには村があり人々が住んでいたという記憶があります。
(うろ覚えにつき、間違っていたらご指摘ください)。
さらに、生態系に影響がある場合もあるだろう事は容易に想像つきます。

一方、ダムによる恩恵や必要性についても、ある程度身をもって理解しているつもりです。
また一部の利権のために、また政治的に利用される場合もあるのではないかとの疑念も拭いきれていません。

そんなこんなで、ややこしいことは避けるために「ダムそのモノに対する興味はあまりない」としてきておりまして、
ちょっとくたびれてしまっている、ただのダムめぐりの素浪人であるとご理解いただければ幸いです。

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岡山県 苫田ダム 深夜3時 満月の夜


ところがところが先日こんな記事を目にしました、あまりといえばあまりです。
一方的に、ダム、もしくはダム関係者の肩を持つつもりではありませんが、認識不足もはなはだしいです。
さらに「太平洋をスプーンでかき回す」とは、あまりにも痛々しく伝わりすぎる表現です。

私の場合、多少へそが曲がっておりますせいで、
それなりの立場の方がされる説明は、「いいにくい部分はどうしても隠してしまいがちになる」との先入観がありますので、
素直な心で聞き入れることが難しいのですが、伝道師の方の努力には素直に頭が下がります。


まことに身勝手ながら、私にはややこしいことに関わるだけの力量がありません。
自分のために淡々と写真を撮りながらダムめぐりをするだけで精一杯ですので、ダムの是非論は一切しないつもりでおります。
今回思うところを書き留めてみましたが、ただの素浪人としてダムめぐりをさせてもらうつもりであることに変わりはありません。

吉井川下流域で暮らす者の一人として、
下流域の人々が安全で豊かに暮らせるために、村や土地が湖底に沈むことを了承された方々には敬意の念を持ち、
これからも苫田ダムには時々通わせていただきます(苫田ダムによる水没戸数は470戸とのことです)。
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by cantam | 2009-05-28 23:27 | ・ダム、ダム湖
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岡山県を中心に広島東部と兵庫西部、及び鳥取全域とその近隣を撮り歩いた撮りおろし写真帳です。主に自然風景と建造物を撮っています。

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